全国ブラックバス防除市民ネットワーク
 シンポジウム
 ブラックバス駆除と水田魚道による自然再生

【名  称】ブラックバス駆除と水田魚道による自然再生
【開 催 日】平成18年11月25日(土)−26日(日)
【場  所】宮城誠真短期大学講堂
【主  催】NPO法人シナイモツゴの会、ナマズのがっこう、
      (社)農村環境整備センター、
      全国ブラックバス防除市民ネットワーク
【後  援】学校法人誠真学園 宮城誠真短期大学、
      大崎市、栗原市、登米市、
【次  第】
1日目(平成18年11月25日)
開 会
あいさつ
   農業環境整備センター
   NPO法人シナイモツゴ郷の会 理事長
祝 辞
特別講演 遺伝子から見た生物多様性保全の必要性
        東京海洋大学副学長 岡本信明
第1部 ため池の自然再生 −ブラックバス駆除と在来魚の復元−
基調講演 ため池と水田が生物多様性保全に果たす役割
近畿大学農学部教授 細谷和海
1 ため池におけるブラックバスの影響と駆除方法
 (1)ブラックバス侵入の影響
        宮城県内水面水産試験場 坂本啓
 (2)農業者が取り組むため池の生態系保全
        シナイモツゴの郷山谷営農組合(仮称) 佐藤司
 (3)ブラックバス防除事例とマニュアル
  1)全国的に始まった市民レベルの取り組み
        全国ブラックバス防除市民ネットワーク 小林光
  2)ため池を中心としたNPOの取り組み
        NPOシナイモツゴ郷の会 石井洋子
  3)伊豆沼バス・バスターズの取り組み
        宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団 進東健太郎
2 ブラックバス駆除後の在来種放流による生態系復元
 (1)シナイモツゴ人工繁殖方法の確立
        NPOシナイモツゴ郷の会 大浦實
 (2)シナイモツゴ里親制度による生息域の拡大
        NPOシナイモツゴ郷の会 二宮景喜
 (3)ゼニタナゴ移植放流による生息域の拡大
        NPOシナイモツゴ郷の会 根元信一・藤本泰文
3 期待される効果
 (1)アユモドキ保全活動とブランド米
        岡山淡水魚研究会 青雅一
 (2)バス駆除と在来魚放流
        誰でもできる自然再生技術と体制づくり
2日目(平成18年11月26日)
第1部 水田自然再生 −田んぼと水路のネットワーク復元−
基調講演 生物多様性保全のための水田の環境基盤づくりと水管理
        宇都宮大学農学部棒号環境工学科教授 水谷正一
自然再生と農村景観について
        農村環境整備センター研究第一部長上月良吾
1 水田魚道の開発と実際(取り組み事例)
 (1)宮城県の取り組み
  1)伊豆沼・内沼周辺での取り組み
        ナマズのがっこう 大場喬
  2)加美郡加美町での取り組み
        加美郡西部土改区 渡辺哲
 (2)河川と水路の接続部に設置した魚道の効果について
        栃木県水産試験場 古田豊
 (3)秋田県八郎潟における取り組み
    −遡上させるか移入させるか−
        秋田県立大学短期大学部助教授 神宮字寛
 (4)コウノトリと共生する地域づくり −魚道の効果−
        兵庫県豊岡土地改良事務所 田和豊
2 自然再生と水田の役割
 (1)水田における鳥類の環境利用
        宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団 嶋田哲郎
 (2)伊豆沼3工区における1年目冬期湛水田の土と稲
        東北大学大学院農学研究科 伊藤豊彰
 (3)冬期湛水田はほんとうに生物多様性が高いのか?
             −1年目の検証について−
        岩手大学農学部農林環境科学科講師 東淳樹
3 期待される効果
 (1)田んぼの学校による環境教育
        ナマズのがっこう 小松純子
 (2)田んぼの学校による都市と農村の交流
        NPO古瀬の自然と文化を守る会 小菅新一
 (3)栃木県の水田魚道設置状況と
    どじょうの市場開拓可能性について
        メダカの里親の会 中茎元一
 (4)伊豆沼3工区のふゆみずたんぼとブランド米
   ナマズのがっこう・伊豆沼冬田んぼ倶楽部会員 佐々木和彦
総合討議
閉会のあいさつ  ナマズのがっこう会長

【報告概要】

 全国から約150名が参加し、2日間にわたって、熱い議論が繰り広げられた。参加者は研究者、NPO会員、公務員、農業土木関係者、JA職員、農業従事者、市民、大学生、調査会 社調査員など様々であった。
 最初に東京海洋大学の岡本信明副学長が特別講演し、遺伝子から見た生物多様性の必要性をわかりやすく解説した。また、基調講演としてコイ科魚類研究の第一人者で近畿大学細谷和海教授は田園地帯の豊かな自然を維持するためには外来魚の影響を排除する必要があることを強調した。
 話題提供第1節では、環境保全に取り組む様々な機関から話題提供があった。まず、宮城県内水面水産試験場から、ため池ではブラックバスによる被害が深刻であり、この影響は全国のため池20万個に及ぶ可能性が示唆された。続いて農業者、全国ブラックバス防除市民ネットワーク、NPO、伊豆沼・内沼環境保全財団が、それぞれの取り組みについて紹介した。特に、シナイモツゴなど希少魚の保全に参加しているシナイモツゴの郷山谷営農組合は池干しによるバス駆除など環境保全と一体となった農業と取り組んでいる状況を説明し関心を集めた。また、NPO法人シナイモツゴ郷の会からは地域の様々な取り組み、伊豆沼・内沼環境保全在団からはバス・バスターズによる伊豆沼におけるバス駆除の実態と効果、全国ブラックバス防除市民ネットワークから全国的なバス防除が市民活動として全国的な広がりを見せている現状について紹介があった。
 第2節ではブラッバス防除後の生態系復元について独自の技術開発と体制づくりを進めている当会から3課題を話題提供した。まず、大浦氏からは誰でもできるシナイモツゴの人工繁殖技術について、二宮氏からは小中学校を巻き込んだ里親制度について、根元氏からはこれまで困難視されてきたゼニタナゴの人工繁殖をため池を利用して可能にした事例について紹介した。
 3節の期待される効果では、アユモドキの保護に取り組む岡山淡水魚研究会から独自な保護技術や付加価値米の販売など興味深い活動について紹介があった。最後に、当会は、ブラックバス防除や在来魚復元が緊急かつ優先課題であり、豊かな田園の自然を保全することにより付加価値米の創出など産業振興にも大いに寄与することができるので、農業関係者の参加が重要であることを訴えた。
 二日目の総合討論では会場から外来魚被害の実態など厳しい現状などが訴えられ、市民や農業関係者による長期的な取り組みの重要が確認された。